2010年11月04日

(木)蝌蚪・おたまじゃくし文字

日本が世界に誇る伝統工芸の一つ。漆器。

その漆器を作るには、漆が不可欠。

☆漆(うるし)の語源
漆とはウルシ科のウルシノキ(漆の木)やブラックツリーから採れる、天然樹脂塗料。塗料だけでなく接着剤としても使われる。その塗膜は耐久性、耐薬品性(酸やアルカリに強い)に優れている。葉や幹に触れるとかぶれる。

元の字は、漆の「サンズイ」が無い字。「漆」とは川の名前を表す字だったのが、元の字に代わって使われるようになった。

「うるし」の語源は「潤汁(うるしる)」「塗汁(ぬるしる)」に由来する。また「うるわしい」に由来する説もある。英語で、Lacquer Tree。


漆を採るヤマウルシの原産地は中国、チベット、インドなどの高原地帯。塗料にしたり蝋(ろう)を採るため、日本各地で古くから栽培されてきた。幹を傷つけて漆液を採り、果実の皮からは蝋を採る。

ウルシ科には漆を採る櫨(はぜ)の他に食べられるウルシ科の植物もある。マンゴー、ピスタチオ、カシューナッツなどもウルシ科。


☆漆の歴史
縄文時代前期約5500年前の遺跡から、漆を塗った櫛(くし)や盆が出土している。縄文時代後期には、土器、弓、装身具などの塗料に使われていた。

日本書紀には、漆部造兄(ぬりべのみやつこあに)という人物の名前があり、漆製作のグループがあったと思われている。

日本最古の法律と言われる「大宝律令(たいほうりつれい、701)には、大蔵省の管理下に漆部司、漆部が置かれていた。

正倉院文書では地方に漆部があったと記載があり、正倉院宝物の中には、様々な漆技法を使った楽器や調度品が残っている。


☆漆の種類
樹液成分
○ウルシオール
日本、中国、朝鮮半島。

○ラッコール
台湾、ベトナム。

○チナオール
タイ、ビルマ。

上質なのは、ウルシオール。


☆上杉鷹山(うえすぎようざん)
米沢藩主の上杉鷹山(治憲はるのり、1751−1822)は藩財政を立て直した名君として誉れ高い人物。だが、その財政再建も大変なものだった。竹俣当綱(たけのまたまさつな)の提案した財政改革案「樹養篇」により、漆100万本を植え蝋を採って売ることにした。だが、西日本で櫨から採れるハゼロウが市場に出回り、米沢の漆蝋は「悪蝋」と呼ばれあまり相手にされなかった。

和ろうそくは、石川県七尾の和ろうそく(ハゼロウ)会津の絵ろうそくが民芸品として残っている。


☆漆器(しっき)
漆器とは、漆を塗った木製の器。漆はプラスチックにも塗れる。英語で漆器は「japan(jは小文字)」中国のChinaとchina(陶器)と同じ。


☆烏帽子(えぼし)
元服した男性がかぶった帽子。烏(からす)と言う字が使われるのは、黒漆で塗ると、烏のように黒くなることから。

漆が黒くなるのは、ウルシオールラッカーゼと言う酵素の働き、酸化して黒く乾燥する性質がある。


☆漆黒(しっこく)
漆黒の闇とは、漆で塗ったように暗い夜。漆黒の髪は、黒くて艶のある髪。

漆黒は今はすでに死語となっている。現在は山奥にでも行かなければ、漆黒の闇はないし、髪は茶髪…。


☆蝌蚪文字(かともじ)
蝌蚪とは、中国の古体篆字(てんじ)で、おたまじゃくしのこと。竹筒に漆文字を書くと、漆に粘り気があるので、文字の線の最初が大きく末端が細くなる。それがおたまじゃくしに似ているところから。


☆漆
大字(だいじ)数字の、壱、弐、参…は、領収書や小切手などを書き換えられないために使用される漢数字。この大字の「七」は「漆」


☆柿漆(ししつ)
渋柿のこと。このシブを和紙で作ったうちわ、傘などに塗っていた。今は酒の清澄剤に使われている。主成分はシプオールと言うタンニンで、高血圧、脳卒中の後遺症にも使われる。


☆下瀬火薬
日露戦争で純粋なピクリン酸を使った爆薬のこと。ピクリン酸は反応が敏感で、砲弾に装着すると弾に使われている鉄と化合して、輸送や発射衝撃ですぐに爆発してしまう。そこで、下瀬博士が考えたのが、弾体の内部に漆を塗って、鉄とピクリン酸の反応を防ぐと言う方法。


☆漆喰(しっくい)
消石灰を結合剤とするモルタルや塗り壁のこと。この漆喰は当て字。
「しっくい」は「石灰」の唐音読みからで、漆とは関係ない。


☆カシュー塗料
カシュー樹の実から採れる油状物質(カシューナットシェルオイル)を原料として、科学加工したものを、カシュー塗料と言う。漆とよく似ているため、漆の代用品となっているが、耐久性、耐薬品性は劣る。


☆三度笠とヤクザ
これは以前も取り上げたけど、ヤクザの定番スタイル、縞の合羽に三度笠は元は飛脚が考案したもの。あの平たい笠は全天候型笠で、漆が塗られている。飛脚が江戸と大坂を月に三度往復することから、三度笠と呼ばれた。そのスタイルをヤクザがパクったもの。


☆漆の歴史の続き
鎌倉時代になると、浮き彫りの彫刻に漆をかけた「鎌倉彫り」が考案され、蒔絵の基本的技巧が完成。室町時代には堆朱、安土桃山時代には、平蒔絵に 梨地が、江戸時代になると、会津塗、輪島塗、津軽塗が盛んになる。

○蒔絵(まきえ)
漆で文様を描き、乾かぬうちに金銀粉、色粉などを巻いて付着させる技法。

○堆朱(ついしゅ)
朱漆を厚く塗り重ねて紋様

○梨地(なしじ)
漆面に金銀の梨子地粉をまき、その上に透明な梨子地漆を塗って、粉を解きださず 漆を透かして見せる技法。 梨の皮に似ているところから

○螺鈿(らでん)
夜光貝やアワビなど、真珠光を放つ貝殻を紋様に切って、生地や漆塗りの面にはめ込んだり、貼りつけたりしたもの。


☆漆の日(11月13日)
漆製法、漆器製造は縄文時代から行われてきた。だが、その頃の漆技術は、まだ未完成の状態であり、そのことを憂いた文徳天皇(もんとくてんのう、827−858)の第一皇子、惟喬親王(これたかしんのう)は、漆技術の向上を願って、法輪寺に参篭(さんろう)本尊の虚空蔵菩薩(こくうぼさつ)に教示を受けて、技法が完成。親王はそれを国中に広めた。親王の参篭満願の日、11月13日には報恩講(漆祭り)がおこなわれる習わしが現在も続いている。

ちなみに、継ぎ漆の「コクソ」は、虚空蔵が訛ったもの。


芸術品からヤクザまで、漆は素晴らしいです。

でも、私たちが普段目にしているのは、カシューナッツ塗料でしょう。











































ラベル:漆器
posted by 松本萌花 at 07:28| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
すごい顔の人とすれ違ったことがありますが、

今にして思えば漆にかぶれていたのかも。
Posted by なおと at 2010年11月04日 10:18
漆ってそんなにひどくかぶれるものですかね。
Posted by 萌花 at 2010年11月04日 12:04
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